低用量ピル
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低用量ピルとは?
低用量ピルは、OC(Oral Contraceptives)とも呼ばれる女性用の経口避妊薬です。
体内のホルモンバランスを調整することで、妊娠の確率を低下させたり、月経に伴う様々な症状を和らげたりする効果が期待できます。
経口避妊薬には、性行為のタイミングとは関係なく毎日継続して服用するタイプと、避妊なしの性行為を行ってしまった直後に服用するタイプ(アフターピル)がありますが、低用量ピルは前者に該当します。
パートナーの協力が不可欠な上に失敗する可能性のある避妊具の使用とは異なり、女性が自分の身体を守る為に自ら実行できる確実性の高い避妊方法です。
低用量ピルの歴史
日本のみならず世界各国の女性に愛用されている低用量ピルですが、販売開始当初から爆発的な人気があったわけではありません。
1960年代にアメリカで初めて認可された当時のピルは、避妊やホルモン障害の改善について高い効果を発揮する一方で、命にかかわるほどの強い副作用が発生したという報告が相次ぎ、次第に使用が問題視されるようになっていきました。
その欠点を解消するべく、配合されている有効成分の量を減らした、すなわち低用量になるよう調整した医薬品が低用量ピルです。
安定した効果はそのままに、重篤な副作用の発生リスクを抑えた低用量ピルは、瞬く間に世の女性の支持を得て広く認知されるようになりました。
近年では、日本でもフェムテックという言葉が注目を集めています。
女性の心身の健康を守ること、悩める女性が声を上げやすい世の中を作ることを目的に、女性の抱える健康問題をテクノロジーの力で解決へ導こうとする取り組みです。
低用量ピル等の医薬品もフェムテックに含まれており、海外では既に主流となりつつある各種製品の積極的な利用が推奨されています。
参考:経済産業省「フェムテックに関する経済産業省の取組~フェムテックで企業が変わる、社会が変わる~」
低用量ピルの効果
低用量ピルを正しい方法で服用すると、避妊を始めとした複数の効力を発揮してくれます。
そのほとんどが、多くの女性にとってプラスになるものです。
避妊
女性が自然妊娠する為には、排卵(卵巣で生成された卵が外へ排出される)、受精(卵子と精子が結び付いて受精卵になる)、着床(受精卵が子宮に到着する)の各工程が正常に遂行される必要があります。
どれか1つでも欠けた場合、妊娠は成立しません。
低用量ピルはこれらの工程を阻害する作用を持つ医薬品です。
具体的には、
- ①卵巣機能を低下させて排卵を抑制
- ②子宮頸管の粘液の性質を変化させて精子の侵入を阻止
- ③子宮内膜の増殖を防ぐ(薄い状態を保つ)ことで受精卵の着床を阻む
以上の働きによって妊娠の成立を妨げます。
低用量ピルを正しく服用した場合の避妊成功率は99%以上です。
現状、望まない妊娠を避ける為の最も効果的な避妊方法と言えるでしょう。
月経・PMSの症状改善
体内のホルモンバランスが安定することで、月経困難症と呼ばれる月経期間中の下腹部痛や腰痛、頭痛、吐き気、食欲不振、精神状態の乱れといった各種症状が和らぎます。
また、月経期間の数日前から起こり始めるPMS(月経前症候群)の症状改善にも有効です。
PMSのみに焦点を当てて改善を図る場合には、より有効成分の含有量が少ないヤーズ等の超低用量ピルが推奨されることもあります。
人によっては仕事や生活に支障をきたすほど深刻な月経にまつわる不調の改善は、女性のQOL(Quality of Life:生活の質)の向上に大きく貢献してくれるでしょう。
その他の効果
上記の他にも、子宮頸がんや卵巣がんといった疾患の予防、ニキビや肌荒れの改善、更年期障害の症状軽減、生理不順の解消、経血量の減少等の効果が期待できます。
女性であれば誰もが1度は経験する心身の不調は、自身の意思でのコントロールが難しいこともあり、大きなストレスになるものです。
いつまでも健康で美しい自分でいる為に、低用量ピルの服用を検討する方が増えてきています。
低用量ピルの仕組み
女性の体内では、女性らしい身体作りをサポートする卵胞ホルモン(エストロゲン)と、妊娠前や妊娠中の母体の健康及び胎児の成長を助ける黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌されています。
どちらも女性が健やかな生活を送る為には欠かせない生理活性物質です。
低用量ピルには、女性の体内においてこれらのホルモンとほぼ同等の働きをする有効成分が配合されています。
例えば、マ―ベロンに含まれているデソゲストレルやトリキュラーに含まれているレボノルゲストレルは黄体ホルモン、これら2商品を含めた多数の低用量ピルに含まれているエチニルエストラジオールは卵胞ホルモンの代替となる成分です。
身体の外から女性ホルモンが補充されることで、ホルモンの量を管理している脳が「既に十分な量が分泌されている」と錯覚し、卵巣機能を低下させ、排卵が起こらないように調整します。
先述した通り排卵が行われなければ妊娠には至りませんので、事前に服用しておくことで望まない妊娠を阻止できる、という仕組みです。
ただし、この仕組みを成立させるには、体内の女性ホルモンの濃度を常に一定に保たなければなりません。
低用量ピルに服薬期間や休薬期間が細かく指定されているのはその為です。
また、これは避妊以外の効果を目的に服用する場合でも同様で、健康維持に必要な量のホルモンを毎日供給し続けることで初めて満足な効果を得られるようになります。
各商品ページに記載してある用法・用量・注意点等をしっかりと把握し、日々の体調の変化に気を付けながら継続的に服用して下さい。
不安や疑問点があれば専門の医師へ相談しましょう。
低用量ピルの副作用
低用量ピルの副作用で最も多く報告されているのは吐き気です。
妊娠初期に起こる悪阻のようなイメージですが、こちらは市販の吐き気止めを併用することで対処できます。
その他、不正出血やめまい、体重増加、胸の張り等の症状が見られるケースもありますが、大抵は医薬品の成分に対して身体が驚いているだけなので、服用を続けるうちに自然と軽減されるでしょう。
低用量ピルを初めて服用する場合や、元々利用していた商品から別の成分を配合した商品へ切り替えた場合には、体内のホルモンバランスが変化する関係で副作用が起こりやすいと言われています。
あまりにも症状が強く耐えられないと感じたら、服用を止めて様子を見る、別の医薬品へ切り替える、医療機関を受診するといった対応を検討して下さい。
重篤な副作用として、血栓症の発症を招いたケースも報告されています。
血液が固まり血管を塞ぐ栓となる血栓症は、進行すると脳梗塞や心筋梗塞等の命にかかわる疾患を引き起こす恐れがあるので注意が必要です。
肥満体型の方や高血圧の方、重度の喫煙者(1日平均15本以上)の方は特にリスクが高い為、事前に医師へ相談することを強く推奨します。
日本産科婦人科学会では、服用後に以下の副作用が発現した場合は服用を中止するべきであるとしています。
服用を中止すべき症状 | 疑われる疾患 |
---|---|
片方または両方のふくらはぎの痛み、むくみ | 血栓性静脈炎 |
胸痛、胸内苦悶、左腕・頸部等の激痛 | 心筋梗塞 |
激しい頭痛、失神、片麻痺、言語のもつれ、意識障害 | 出血性・血栓性脳卒中 |
呼吸困難、掻痒感、胸痛、喀血 | 肺塞栓 |
視野の消失、眼瞼下垂、二重視、乳頭浮腫 | 網膜動脈血栓症 |
黄疸の出現、疲労、食欲不信 | うっ血性黄疸、肝障害 |
長年の悪心、嘔吐 | ホルモン依存性副作用、消化器系疾患 |
原因不明の異常性器出血 | 性器癌 |
肝臓の腫大、疼痛 | 肝腫瘍 |
体を動かせない状態・血圧上昇など | 静脈血栓症 |